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伊達家家臣・伊達成実に関する私的資料アーカイブ

『名語集』序文

『名語集』序文

原文

政宗公よろづ御詞の末、少々常の御様子、人伝にも承り、折節には拝み奉り候へども、卑しき身きたなき心に、連々取り失ひ候事あさましく、存じ出し次第、少々書付け申し候。然あれども詞かすかにして、始終たしかならず。誠に秋の月の、暁の雲にあへるが如しとやらんに御座候へども、いにしへの一人二人も、同座のとき、語り慰むためばかりにて候なり。

現代語訳

政宗公のすべての御言葉や普段の御様子については人からも聞き、そのときどきに拝顔し申し上げたが、私が身分低く不忠なため、忘れてしまうことが情けなくて、思い出すことにして、少々書き付け申し上げます。しかしながら、文章がぼんやりしているので、はじめとおわりははっきりしない。いうなれば秋の月を見ようとしたら夜明けの雲にであってしまったかのようだというのはこういうことかと思いますが、昔の知人と一緒にいるときに、語り慰めるためだけに記します。

地名・語句など

・詞かすかにして、始終たしかならず。誠に秋の月の、暁の雲にあへるが如し:古今和歌集仮名序、喜撰法師の段よりの引用。『古今和歌集』岩波文庫/19p
詞かすかにして始終たしかならず。誠に秋の月の、暁の雲にあへるが如しとやらんに御座候〜」古今和歌集、六歌仙・喜撰法師を表した言葉「ことばかすかにして、はじめをわりたしかならず。いはば、秋の月を見るに、暁の雲にあへるがごとし」より。

感想

検索してたら、「詞かすかにして、始終たしかならず。誠に秋の月の、暁の雲にあへるが如し」ってのが、古今和歌集序文by紀貫之の引用であることを知って、ビックリしました…。
あと、ラストの方もそうなんですが、「卑しき身きたなき心」ってとこに、逆に作者の身分意識が見える気がします。