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伊達家家臣伊達成実に関する私的アーカイブ

『名語集』29:ただ居ることなし

『名語集』29:ただ居ることなし
(不完全なので、コピペなどはやめといた方が吉です。下線は文章の意味がわからなかったところ。間違いなどご指摘いただけたら幸いです)

29:ただ居ることなし(ボーッとしていることがない)

原文:
一、第一、御まめに御座なされ候故、いささかの御間も、只御座なされ候事、覚え申さず候。終日、入替り入替り御用を申上げ、あなたよりも仰付けられ、其の間には御硯を離させられず、ものをなされ候。あるいは書物を御覧、詩歌・文字の穿鑿か、雨中などのつれづれには、竹を取り寄せられ、御自身割らせられ候て、御前に於て色々に御削らせなされ候。或時の御咄には、「天気悪しき折節、竹を割りたるほど、気の楽はあるまじく候。世上にて労瘵など煩の者に、竹を割らせたらば、心をとり直し申すべきものを」と仰せられ、御笑い遊ばされ候。惣じて人に変えらせられし事は、御若き時より、終に横にならせられ候事仮初にも御座なく候と、古き者ども申しとなへ候。近頃はいよいよ拝み奉らず。御若き時、御昼寝遊ばされ候にも、夜の如く御床取らせられ、夜の御行儀にて御寝なされ候。天然柱や張附などに御もたれ候ては、御仮寝遊ばされ候事、御座候が、横にならせられ候事は、御座なく候。御膳なども、朝晩の外、御菓子の類にても、昼など召上げられ候ためし、御座なく候。夏は申すに及ばず、冬も大きなる御茶碗にて、水を幾度も幾度も、召上げられし候。尤も、冬とても、御小袖三つなど、召させられ候事は、あまり御座なく候。尤も、御頭巾など、遂に召させられ候儀、御座なく候。御火燵遊ばされ候も、御向ふをば、御布団御明けさせ、それも御手ばかり、御あたため候。冬とても、節々御裸にならせられ候。尤も、夏中は、水の内にて、一夏を送らせられ候様に御座候。或時仰せられ候は、「我れ若年より、夏など病気の折節は、川狩をし、水慰をすれば、即ち心持よく、誠にいつもと云いながら、取りわけ夏の慰程、面白きものなし。鵜飼の謡にも、鳥の巣おろしあら鵜ども、みなぎる水にぱっと放せば、底にも見ゆるかがり火に、おどろく魚を追ひまはし、かづきあげ、すくいあげ、隙なく魚をすくふ時は、罪も報も後の世も、忘れはてておもしろやと。げにさもあらんずるものを」と、御笑ひなされ候。「わきて、釣りには他念なきものなり。太公望、面白がりたるも、道理かな」と仰せられ候事。

現代語訳:
第一に、とても勤勉でおられたので、少しの間も、ただぼーっとしていらっしゃったのを拝見した覚えがない。一日中、入れ替わり入れ替わり用事を申し上げ、政宗の方からもいろいろとご命令を下される間も、硯を離さず、書き物をされている。あるいは本をお読みになり、詩歌・文字の調べ物をしている。雨のときなどは、竹を取り寄せて、ご自分で割って、前でいろいろに削らせたりした。あるときのお話では、「天気の悪いときに、竹を割ることほど楽しいことはないよなあ。世間で、気鬱を煩っている人に、竹を割らせたら、気持ちも取り直すだろうになあ」とおっしゃり、お笑いになった。すべて人に変えらせられし事は、若いときから、横になることがちょっとの間もなかったと、昔から仕えている人たちもおっしゃっていた。最近はいっそう見たことがない。お若いとき、お昼寝するときも、夜のようにきちんと床をしかれ、夜のようにお休みなさった。天然柱や張付にもたれて、転た寝することはあったが、横になられたことはなかった。御飯も、朝晩のほかに御菓子なども、昼食をとることはなかった。夏はもちろん、冬も大きな茶碗で、水を何度も何度もおのみになった。とくに、冬も小袖を三枚重ね着なさることはあまりなかった。それに、頭巾などをかぶられたことはついになかった。火燵に入っているときも、向こう側の布団をあけさせて、手を温めている程度だった。冬であっても、ときどき裸になっていた。特に夏は、水の中で一夏を送るぐらいでいらっしゃった。あるときおっしゃったのは、「おれは若いときから、夏の病気の時は、川狩りをし、水遊びをすれば、すぐ気分がよくなった。いつものことだけど、特に夏の遊びほど面白いものはない。鵜飼いの歌にも、鳥の巣を下ろし鵜を水に放せば、かがり火に驚く魚を追い回し、かづき上げ、魚をすくう時は、罪も報いも死後の世界も忘れはてて面白いなあというけど、本当にそのとおりだなあ」とお笑いなされた。「とくに、釣りは熱中できるものだ。太公望が面白がっていたのも、わかるなあ」とおっしゃられた。

メモ:
・穿鑿(せんさく):古くは「せんざく」とも。穴をあけること/細かい点までうるさく尋ねて知ろうとすること/細かいところまで十分調べること/事の次第。
・恋ひらし(こひらし):「恋いふらし」の上代東国方言。恋い慕っているらしい。
・世上(せじょう):世の中。世間/周りの世界。近辺。
・労瘵(ろうさい):漢方で、肺浸潤・肺結核のこと。またそれから来る気鬱症状。

感想:
政宗の普段の生活ぶりがよくわかるお話です。右筆使うのが当たり前のあの時代・立場なのに、自筆手紙魔の政宗が書き物に熱中しているところ、本を読んでいるところなどが目に浮かぶようです。歌の本熟読してそうですね。竹割が楽しみってのは…しょーじきよーわかりませんが…(笑)。たしかに気持ちいいでしょうが、鬱はなおらんだろうよ…(笑)。人前で寝ないのは有名ですよな…。小袖とか頭巾とか…暑がりだったのでしょうかね? ここで火燵エピ出てきます! あと一夏を水中ですごすって…(笑)。夏の政宗、想像するとかわいいですね。
あと、ちょろちょろと、東国方言が出てきます。こういうの見ると、なんか感動しますね。かれらの息づかいが聞こえるような気がします。
【追記】野崎様より、この竹を割ったり削ってしているのは、茶杓を作っているのではないかとご指摘いただきました。一関以北は大きい竹は自生していないのだそうです…。へー知らなかった。ご指摘ありがとうございます。