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伊達家家臣伊達成実に関する私的アーカイブ

『名語集』跋文【仙台叢書版】

普段このブログに上げている『名語集』原文は宝文堂版を参考にしているのですが、(「伊達の松陰」目当てに)仙台叢書1を入手してみたところ、仙台叢書版の方の『名語集』跋文も素晴らしいので、これも併記することに致します(とりあえず好きなとこからですが…)。宝文堂版は句読点も入っているし、漢字に直されているので、もちろん読みやすさは段違いなのですが、仙台叢書版の方も文章としてとても素敵なのです。
もちろん当人がかいたままではないのでしょうが、ひらがなの割合や、区切りが、言葉のリズムが伝わってくるようで、とてもいいです。
私は「よろこび身にすぎたのしみ心にあまり」と、「野山がり〜」から「たのしみつきてかなしみ来り」の対比のあたりがものすごく好きです。そして自分が頑固になってしまい、それを見て人が後でばかにしているだろう…と思っているところも好きです。
あと、「我はかやうなるくちむちもの〜」からラストまではもう言い尽くせないほど美しい。哀しく、切なく、そして純粋な思いが伝わってくるような文章です。現代語訳は宝文堂版と同じですが、是非ご一読下さると嬉しいです。古文がわからなくても、気持ちは伝わると思います。

去程にかれ是のさわがしきまぎれには。皆人さほどになかりしが。御仏事ゆへなふ過行ままに。何となく世の間しづやかに。大火を打けしたるごとく。隙明たるやうになりゆく。またあらぬむなさわぎして。如何に成ゆく身のはてぞと。日にしたがい夜にまして。御こいしさは君のおもかげ。いにしえのともとちひとりふたり。よりあいてかたりくらしなきあかしぬ。ふてんの下王土にあらずと云事なし。御領中のものいづれか。忠宗公の者ならざる。しかれども御小座よりの御奉公の衆とて。ひちをたてめを大きにするを見ては。いつとなく物かなしくあわれ。此ころまでかくはなかりし物をとおもひ出し。君の御めぐみあまねくして。よろこび身にすぎたのしみ心にあまり。我人御奉公にちうをなしゆかば。御おんしゃうにもあずかりにあわせ。身のえいがをもせんと心をいさめ。有時は野山かりに家じを忘れ。または春の花の咲ちり。秋の木の葉の落るゆうべ。うたをつらね詩をぎんじて。もじのたのみも時うちり代かわるならい。たのしみつきてかなしみ来り。諸人しんざんとなり。いつしか引かへて。時の出頭人のまえに。こひをなしひざのまへに。ちりをはらい草の露水のあわの。きへのこるを身ながらも。秋の野のおみなへしのひとときを。くねる心ぞかいぞなき。きのふはさかへけふほをとろへ。世を過わふるありさまなれば。したしきもうとくなり行。身はくれ竹のうきふしを人にかたり。よしのはを引て世の中を恨。人のまじはりもたまさかなれば。かたみすはりて見ぐるしく。人も後にはいやしめり。是に付かれにつけても。御あとをこへ奉ることかぎりなし。ゆめにも君を見奉りては。そ国のやうひ山にて。かんたんの枕のえいがさめて。ろせいがかなしみもおもひやられ。なみだとともにあかし暮す。扨亦いにしへすみなれさせ給ふ。若林のありさまを見るに。御物すぎ世にこへて。つくりみかかせ給ふ。御屋かたも一とせの内に。あれはて庭には草ぼうぼうと。露しげきなり行をも。たれ打払物もなく。日頃水をたのしみおぼしめし。やり水のたよりおもしろふ。所々にかけ入たもふも。ながれたへいけにはまごもおいしげり。はらう者もなければ。あれはててしまのめぐりもくずれはて。うろくつもすみうく水鳥も羽をやすめえず。おりにふれ時にかのふ四きの御てんも。かなたこなたくずれはて。こらうやかんのすみかと。なりけるぞ。うたてけれ。そのほかそれぞれの奉行・とう人・諸侍の。やしきやしきもかたばかりに。あれはて草ふるき野べとぞ成りぬ。一人世をさり給へ万民のなげきとなり。めもあてられぬしだいなり。年月とほく立ゆくと。露忘れぬ御おもかげ。忠宗公の御恩も浅からず。大慈悲の君にてましませば。おしなべてかたじきなき御心ばせ。むかしにかわらぬ事なれども。身のおとろへは月日にまし。よろづ心にまかせねば。今さらおどろく斗なり。我はかやうなるくちむちものはかな。心に神や仏をうらみねたみて。つれなき命をめされよと。あらまし事を申にぞ。おもひのほどはしられたり。誠にとりあつめたる草の跡。いやしきわが身にあわせて。前後もさらにふつつかに。口にまかせ書つくれば。物くるはしき心やと。見る人はおぼさん。是まったく人のためならず。君の御別れかなしくてせんかたなきままに。むかしがたりのほどをへば。忘れやせんと秋の夜の長き寝ざめの独事。春のゆふべの暮がたき。つれづれなぐさむたよりにも。まさしくききし事ともなれば。ところどころかきおきて。ことばのたらぬ所をば。我心にてさしくわへ気をものべんためばかり。いちいちにかきしるさば。筆もおよばぬ事ともなれども。心ありて口にいでず。言葉つづきかた事にして。あらぬさまなれば。ついに書やみぬ。誠に君の御言葉のたね。我身にちかきゆへ。かへりてかきよごしはんべりぬ。