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伊達家家臣・伊達成実に関する私的資料アーカイブ

成実著作とその他政宗言行録

今日は成実の368遠忌ですね。少し家庭の事情でごたごたしてて何も出来なかったのですが、それもどうかと思いまして、前に下書きしてたものを上げてみました。
フォロワーさんから、「『政宗記』とか『成実記』ってどこを探せば見られるの?」とご質問いただいたので、図書館などでどの本に載ってるのか、それぞれの違い…ということをかいてみました。
合わせて他の著者による政宗言行録である『名語集』・木村本についても載せています。
いますごい値段なんですよね、古本が…。マケプレとかではすごい値段なので、図書館で探して読んでみるのがよいかと。

          *      *

伊達成実は伊達政宗の親族(一門第2席)で、家臣であり、その前半生の軍功もさることながら、後半生政宗の軍記・言行録を書いたこともかれの大きな功績と言えます*1
その著作は大きく分けて『政宗記』『成実記』と呼ばれますが、様々な異本があり、いろんなところで翻刻されています。

成実著作の現在比較的容易に入手できる翻刻版(史料を活字化したもの)の一覧はこちら。

  • 『伊達日記』:群書類従第21輯/巻390下/1893
  • 『正宗公軍記』:軍記類纂(国史叢書第24)/国史研究会編1920
  • 『伊達日記』:仙道軍記;岩磐軍記集/歴史図書社1979
  • 『成実記』:仙台叢書3巻
  • 『政宗記』:仙台叢書11巻
  • 『政宗記』:伊達史料集上

自分は読みやすさで、伊達史料集版の『政宗記』をよく読んでいます(仙台叢書版は句読点や文区切りが原文のまま)。手に入りやすさでは群書類従(大学図書館・大きな図書館ならたいていおいてある)>仙台叢書(東北なら手に入りやすいかと)>伊達史料集(他にもいろんな伊達史料があるのでオススメですが、ちょいと探さなくてはいけない?)かと思います。

『成実記』:

伊達政宗が天正十二年(一五八四)十月に家督相続を行なってから慶長五年(一六〇〇)までの記録。
ー塙保己一『群書類従390』合戦記「伊達日記」
ー仙台叢書刊行会『仙台叢書・3』所収

『伊達日記』の評価(戦国軍記辞典より)
伊達政宗を中心とする伊達家の動向が記されていくが、作者伊達成実の位置を中心とした記述が多く、伊達政宗の行動が遠くなったり、きわめて近くなったりする。その間に、政宗が落馬して骨を折ったりするなど、細かい記事も記される(天正17年正月)。軍勢の数の記述が少数でなされており、物語化されていない正確さが見られ、覚書の姿が残されている。
広く不特定多数を対象にしたものではなく、限定された身近な人を読み手として意識しているようなところがある。「候文」の日記であり、ある程度見る人を意識したもので、それも具体的な地名、人名等、お互いに分かり合える範囲の人であったと思われる。作者伊達成実は信頼された武将として、片倉小十郎とともに前線に出ていることが多く、それだけに主君政宗とは物理的距離があって、政宗の行動記録には濃淡が出ている。上中巻において、作者の筆は天下の形勢よりも周辺各所に起こる小競り合いの連続に向かっているが、下巻になると中央勢力との関係が詳しくなる。
ーーーー古典遺産の会『戦国軍記辞典』和泉書院/2011 p365 より引用

『政宗記』:

『成実記』を全十二巻に整備し、政宗の性格、家臣の取立、晩年の日常生活、能・茶・猟・詩歌などの教養・趣味、死去と葬礼を記した巻九後半から巻十二までを加えたもの。
ー仙台叢書刊行会『仙台叢書・11』所収

『政宗記』の評価(戦国軍記辞典より)
一つ書き覚書風の『伊達日記』『成実記』などの類書に比べて、構成、文章ともに整理されており、伊達政宗一代記としてよくまとめられている。
ーーーー古典遺産の会『戦国軍記辞典』和泉書院/2011 p366 より引用

基本的には成実記系統(成実記・伊達日記など)の方が先にかかれた、漢文・候文主体の覚書風のもの、政宗記系統が政宗死後にそれを参考に改めて書き直された古文体のもの、という認識でかまわないかと思います。
参考エントリ:『政宗記』と『成実記』の区別

政宗の言行録としては、このほかに『名語集』(高橋富雄『伊達政宗言行録-政宗公名語集-』宝文堂/昭和62年)・『木村宇右衛門覚書』(『伊達政宗言行録-木村宇右衛門覚書-』小井川 百合子)などがあります。

参考:

『伊達家日記』

『天正日記』『伊達天正日記』『御日日録』などとも呼ばれる伊達家の記録。天気や政宗の行動の詳細を記したもの。政宗を中心とした動きがよくわかるが、日々の事柄については簡素な記述。
成実の著作である『伊達日記』とは名前が似ているだけで関係はない。

『名語集』:

作者不明(元禄16年1703の時点ですでに不明であった)。成実という説・侍女小川であるという説などがある。各項で文体の異同が見られ、成実説の他に複数著者説*2、もしくは文学的にすぐれた存在による描き直しなどの可能性がある(と私は思います)。特に後半は女流日記文学的文体が美しい。
ー高橋富雄『伊達政宗言行録-政宗公名語集-』宝文堂/昭和62年
ー仙台叢書刊行会『仙台叢書・1』所収

『木村宇右衛門覚書』:

政宗の小姓の木村宇右衛門可親(よしちか)が記した、言行録。政宗が近侍の小姓たちに語ったことが主体で、政宗が語った家臣の心得などと共に、政宗に起こった歴史上事件なども、政宗の回顧という形で記されている。慶安5年の政宗17回忌の事も記されており、その後すぐ頃に成立したものと思われる。(『政宗記』と比べ)記録に徹した詳細な情景描写が特徴*3

*1:まあ少なくとも私はそこが一番かれのすごいところだと思っています

*2:明らかに成実でない人がかいている項があるのはたしか

*3:木村はとっても記憶力よさげなライターさんです…