『名語集』80:奥の寝所の怪
原文
二十日朝、江戸へ御たちなされ、今は岩沼辺なるべきかと思ひし折ふし、奥の御寝所にて、たかだかと御独言、しばしがほど、まさしく御聲したり。女房たち、こはいかにと、不思議に思ひ、おづおづ忍びよりて、見しかども、何のゆくへもなかりしと、後に聞きし。
地名・語句
現代語訳
4月20日の朝、江戸へ出発なされ、今は岩沼あたりだろうかと思っていた頃、奥の御寝所にて、大きな声で独り言がしばらく聞こえた。まさしく政宗の声だった。女房たちはこれはどういうことかと不思議に思い、おずおずと忍び寄って見たけれど、何の姿もなかったと後で聞いた。
感想
「後から聞いた」ということは、この人は20日までは随伴していた人なのかな?(『名語集』作者問題)と思いますね。それがなければ、女房説が強くなってくるのですが。