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伊達家家臣・伊達成実に関する私的資料アーカイブ

『伊達日記』28:弾正の苦悩

28:弾正の苦悩

原文

一 弾正所存に、不慮の儀を以普代の主君を相背、伊達殿へ御奉公仕候。天道も恐敷存候。流石に主君の御子勝三郎を某引立、政宗公へ参傍輩に成り奉る事も天命も口惜しく、仏神三宝にも放奉るべきと感て、中新田の御留守居南條下総所迄正三郎殿を送り奉り候。二人の御方は義隆にも正三郎殿にも離され候て明暮御歎きに候。御自害も流石罷成らず。御なみだのみにて候。

語句・地名など

勝三郎→正三郎

現代語訳

弾正は思いも寄らない出来事で、代々使えた主君を裏切り、伊達へ奉公することになった。天の定めた道にも背く恐ろしい事である。さすがに主君の子正三郎を私が引き連れ、伊達へ送り、同僚になるとなれば、天命にも背き、仏神三宝にも見放されるだろうと思い、新田の城代南條下総のところまで正三郎をお送り申し上げた。二人の北の方は、義隆からも正三郎からも離されて、歎き明け暮れていた。自害することはさすがにできず、泣くこと以外できずにおられた。

感想

氏家弾正は仕方なく伊達へ内応することにしたけれども、正三郎を政宗に引き渡すことはさすがにできないと思い、やめたことが書かれています。ここの弾正の悩みはまことに人間らしいところが出ているなあと思います。