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伊達家家臣・伊達成実に関する私的資料アーカイブ

『名語集』8:脇差の下緒を帯にはさむ

『名語集』8:脇差の下緒を帯にはさむ(脇差の下緒を帯にはさむ)

原文:

一、常々御意遊ばされ候は、「脇差は、是非、下緒を帯にはさみたるがよきなり。昔より数多覚えの候が下緒はさまぬ故、鞘間々抜けて、怪我したる事、幾度もあり。鞘止よくして、下緒帯にはさむべし。常々は、小脇差・中脇差の外、さすべからず。大脇差は野山にてよし。とかく大脇差は、立廻りに戸柱に打ち当り候へば、第一、其の身も無骨に見えてあしし。尤も、何ぞ用の時も、脇差の長き短きに、武辺はなきなり。只、心を長く大きにもち、脇差は短くして、常に見てよき様にしたるがましなり。尤も刀も、身の恰好に過ぎたるも、覚えなくば無用か。面々、諸道具・著物は、其の身恰好、持物次第なり」と、御咄遊ばされ候事。

地名・語句など:

是非:どうあっても、なにとぞ、必ず/正しいことと正しくないこと
間々:時折、頻繁ではないが時折現れるさま
無骨/武骨:骨張ってゴツゴツしていること/洗練されていないこと/役に立たないこと/都合の悪いこと
尤も:なるほどその通りと思われること/ただし、そうはいうものの
武辺:戦で勇敢に戦うこと
面々:おのおの、めいめい/二人称の人代名詞、対等又は目下の多数の者に呼びかけるのに用いる

現代語訳:

つねづねお思いになっておられたことは、
「脇差はどうあっても下げ緒を帯にはさんでいるのがよい。昔からたくさんの身に覚えのある者が、下げ緒をはさまなかったがために鞘がときどき抜けて、怪我をしたこと何度もある。鞘止めをよくして、下げ緒を帯にはさみなさい。普段は、小脇差・中脇差以外はさすべきではない。大脇差は野山にでたときはよい。とにかく大脇差は立ち廻りしたときに戸や柱に打ってあたってしまったなら、一番にその身も役に立たないように見えて悪い。ただし、どんな用事のときも、脇差の長い短いに活躍できるかどうかは関係ない。
ただ、心を長く、大きくもち、脇差は短くもって、常に見てよいようにした方がいい。そうはいっても、刀も、身の恰好に過ぎたものも、武の心得がなければ、無用だろうか。
おのおの、武具や着物は、その人の格好と心の持ちよう次第である」
と、お話なさったのであった。

感想・メモ:

脇差の下げ緒を帯にさしておく、というとても具体的で、わりと細かい心得の話です。
常に臨戦態勢であれということと、武具を大事にする心を説いた、武将らしいリアリティのある項ですね。
手を切った人居たんでしょうね…。