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伊達家家臣・伊達成実に関する私的資料アーカイブ

『名語集』11:能見物の仕方

『名語集』11:能見物の仕方(能見物の仕方)

原文:

一、或時の御咄に、「かりそめにも能などは易からぬ儀なり。太夫翁をかけ、惣役者烏帽子著る事、唯常の事になし。第一、我が身の祈祷なれば、身をきよめ、行儀よくして、座敷中高聲もせぬ様に、三番四番までは、よくじっとして見物せよ。其の後は、気が退屈せぬ様に、能の間々休息して、見物をせよ。見る内は面白きにかかり、身の草臥も知らぬなり。能過ぎては、何事にても打寄りて、一笑いして、また其の草臥忘るる様にせよ。惣別、見物何事にも、草臥直さぬ故に、重ねて見物にあるきを好まぬ物なり。それは心持下手故」と、御咄遊ばされ候事。

地名・語句など:

かりそめにも:少しでも、ほんのちょっとでも
草臥(くたびれ):疲れ、くたびれ

現代語訳:

あるときはこのようにお話になった。
「能などは、ほんのちょっとでも易からぬものである。太夫が翁の面をかぶり、すべての役者が烏帽子を着ることなど、通常の様子ではない。
第一、私自身の祈祷であるので、身を清め、行儀をよくして、座敷の間は大声もたてぬようにして、三番、四番まではじっとしてよく見物しなさい。そのあとは、気持ちが退屈しないように、能の間間に休息を取って、見物しなさい。見ている間に面白いところに入り、身体がくたびれているのも気づかないほどである。能が終わったら、何事であっても集まって、ひと笑いして、またその疲れをわすれるようにしなさい。
総じて、何を見るにしても、ものを見続けるのを嫌う者がいる。それは疲れを直さぬからであり、心がけが下手な人であるからだ」

感想・メモ:

この項は能を見るときの心得についてです。
政宗が能見物を好んだことはよく知られています。ここには書いていませんが、家中で能をする際は見物人も長袴をはき、正装して見物していたとあります。
能といえば、政宗の奇行として能役者脅迫事件の事件が広まっていますが、あれはどうも能役者やほかの家中に対するパフォーマンスではないかと思っています。家中で能やってるときはめっちゃマジメに見ているので…。
一方で成実も能に関してはいくつかの逸話や重要な事項があります。
能楽と郷土を知る会さんのブログに記事が載っていますので、ぜひぜひお目通しください。成実の謡本は能楽史上わりと重要らしいのですよ!!!!
https://nohgaku-kyodo.com/tag/date-shigezane